『進撃の巨人』（しんげきのきょじん）は、諫山創（いさやま はじめ）によるダークファンタジー・バトル漫画の金字塔です。圧倒的な絶望感と、緻密に張り巡らされた伏線、そして重厚なテーマ性で、世界的な人気を博しました。
1. 連載開始と初期の衝撃（2009年〜2013年）
作品は、マイナーな雑誌でひっそりと始まりましたが、その斬新な設定と衝撃的な展開で瞬く間に人気を獲得しました。
連載開始 (2009年): 2009年から2021年まで、『別冊少年マガジン』（講談社）にて連載されました。
初期設定の衝撃: 人類が高さ50メートルの巨大な壁の内側で生活し、壁の外から襲来する**「巨人」に怯えながら暮らしているというディストピア的な設定が強烈なインパクトを与えました。主人公エレン・イェーガー**は、目の前で母親を巨人に捕食されるという絶望的な経験をし、全ての巨人を駆逐することを誓います。
作風とテーマ: 圧倒的な暴力と絶望感が漂う世界観、主要キャラクターの容赦ない死、そして壁の外の真実をめぐるミステリー要素が、従来の少年漫画にはない異質な魅力となりました。
2. アニメ化と世界的ブーム（2013年〜2017年）
テレビアニメの放送が、作品を世界的な現象へと押し上げました。
テレビアニメ放送開始 (2013年): 2013年にMBS・TBS系列でテレビアニメ第1期が放送され、そのハイクオリティな映像と演出、そして衝撃的な内容が国内外で爆発的な人気を呼びました。
人気爆発と社会現象: このアニメ化を機に、単行本の売り上げは飛躍的に伸び、社会現象を巻き起こしました。巨人のビジュアルや、調査兵団の「心臓を捧げよ！」というスローガンは広く知られるようになりました。
「壁の秘密」の解明: この時期の物語では、「壁」の正体や、巨人の種類、そして人類の中に潜む「巨人」の存在など、物語の根幹に関わる重要な真実が次々と明かされていきました。
3. 転換期と最終章（2018年〜2021年）
物語は壁の外の世界へ展開し、戦争と歴史の真実が描かれる、より重厚なテーマへと移行しました。
「海」の向こう側へ: 物語の舞台が、壁の中の世界から、巨人を生み出したマーレ国、そして主人公たちの故郷であるエルディア国の歴史へと大きく転換します。
テーマの深化: 単なる「巨人対人類」のバトルから、「人種差別」「歴史の歪み」「連鎖する憎悪」といった、現実の国際紛争にも通じるような重いテーマを扱うようになり、青年誌的な深みを増しました。
エレンの決断: 主人公エレン・イェーガーの行動原理が大きく変化し、彼は自身の信じる「自由」と、世界の平和との間で究極の選択を迫られます。
連載完結 (2021年): 2021年4月に約11年半の連載に幕を下ろしました。完結後もその結末を巡って大きな議論を呼びました。
4. アニメ完結と不朽の評価（2023年〜現在）
漫画の完結後もアニメが制作され、作品の評価を不動のものとしました。
アニメ最終回 (2023年): テレビアニメ『The Final Season 完結編』が2023年11月に完結し、漫画の結末までが映像化されました。この完結は、世界中のファンにとって大きな区切りとなりました。
影響力: 『進撃の巨人』は、その緻密な世界構築、衝撃的なストーリーテリング、そして「自由とは何か」という普遍的な問いかけにより、日本の漫画だけでなく、世界のエンターテイメント史に名を残す作品として評価され続けています。
『進撃の巨人』の歴史は、一つの少年誌連載作品が、その圧倒的な力で世界中の読者を巻き込み、社会現象を巻き起こしながら、最終的に「歴史と戦争」という極めて重厚なテーマを描き切った、漫画史においても特異な軌跡だと言えます。